開館30 周年記念 ミロ展──
日本を夢みて
Joan Miró and Japan
ジュアン・ミロ《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》1945年 油彩、キャンバス 福岡市美術館 ©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
バルセロナに生まれた芸術家ジュアン・ミロ(Joan Miró)(1893-1983)は、ピカソやダリと並ぶ現代スペインを代表する巨匠として、日本でも永く愛されている。
初期の代表作から、民芸や書、やきものを通じて触れた日本特有の質感を反映した戦後の大作まで、ミロの90年の歩みを辿る展覧会が愛知県美術館で開催中だ。
絵画や彫刻、版画、タペストリー、そしてやきものにまで及ぶその旺盛な創作活動の裏に、日本文化への深い造詣があったことは、今まであまり知られていないし、大きく論じられて来なかった。
ミロは、浮世絵や俳句を通じ日本への憧れを持っており、日本の民芸品を彼のアトリエに飾っており、彼の作品には日本文化が大きく影響しているのだ。
また、一方、世界で初めてミロの本を出した詩人・美術評論家の瀧口修造だ。
☆ミロとは…
ジュアン・ミロ(Joan Miró, 1893-1983)
20 世紀のスペインを代表する芸術家。
1893 年、スペインのカタルーニャ地方の都市バルセロナに生まれる。美術学校を経て、バルセロナの前衛芸術の拠点ダルマウ画廊で作品を発表。1920 年代からはパリにアトリエを借り、両親の別荘があったカタルーニャの小村モンロッチと行き来しながら制作するようになる。
シュルレアリスムのグループと親しく交流しつつも、つねに故郷の風土に根ざした作品を発表していたミロだったが、スペイン内戦により故郷を追われ、第二次世界大戦で各地を転々とすることを余儀なくされた。
1944 年にやきものと彫刻の制作をはじめ、1956 年には妻の故郷マジョルカ島のパルマに広いアトリエを構えて幅広いジャンルの作品を⼿がけた。
1983 年に90 歳で没す。
☆みどころ
1 浮世絵に俳句、⽇本好きのミロ。
ミロが生まれた1893 年のバルセロナは、その数年前の万国博覧会開催をきっかけにした日本美術ブームの真っ只中にあった。
ミロの生家の近くには日本美術の輸入販売店があり、ミロが初めて個展を開いた画廊でもときおり⽇本の浮世絵や工芸品が展示されていた。
またミロの周囲には俳句の魅⼒に取り憑かれた詩人たちがいした。
こうした環境で過ごしたミロが日本への想いを募らせたのは、ごく自然なことだったのかもしれない。
パリでシュルレアリスムに出会うよりも前に、ミロは日本文化に出会っていたのだ。
以下の画像はフォトギャラリーにて参照されたし。
ジュアン・ミロ《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》1917年 油彩・コラージュ、キャンバス ニューヨーク近代美術館
©The Museum of Modern Art, New York. Florene MaySchoenborn Bequest, 1996/Licensed by Art Resource, NY ©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《花と蝶》1922-23年 テンペラ、板 横浜美術館
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《シウラナ村》1917年 油彩、キャンバス 吉野⽯膏コレクション(山形美術館寄託)
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
2 画家ミロの歩みを国内外の珠玉のコレクションで辿る。
1920 年、27 歳で初めてパリに滞在して以来、ミロは故郷カタルーニャの風景や生き物たちを描いた絵画をパリで発表するようになる。
当時世間を騒がせていたシュルレアリスムの詩⼈や画家たちとも親しくなり、ミロもその一員として名が知られるようになって行く。
従来の絵画を乗り越えるためにさまざまな実験を試みたが、なかでも絵画と詩が溶け合うミロならではの画面からは、東洋への眼差しも透けて⾒える。
スペイン内戦と第二次世界大戦という時代の波に翻弄されながらも決して制作を止めることはなかったミロ。
ジュアン・ミロ《絵画(パイプを吸う男)》1925年 油彩、キャンバス 富山県美術館
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《焼けた森の中の⼈物たちによる構成》1931年 油彩、キャンバス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ ©Fundació Joan Miró,Barcelona
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《絵画(カタツムリ、女、花、星)》1934年 油彩、キャンバス 国立ソフィア王妃芸術センター Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía, Madrid
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
3 ⽇本を夢みて…念願の来⽇。
第二次世界大戦を経て、ミロはますます日本の⽂化にのめり込んで行く。
日本のやきものの技術を学んだアルティガスと共に陶芸に熱中し、友⼈たちが日本から持ち帰ってきた⺠芸品の数々に目を奪われ、⾃らも日本⾵の作品を作るようになる。
そして1966 年、⽇本での大規模な回顧展開催を機にミロは念願の初来日を果たす。
京都や奈良、信楽、そして名古屋と⽇本各地を⾶び回り、世界初のミロの単⾏書を1940年に刊⾏していた詩⼈で美術評論家の瀧⼝修造との対⾯もようやく叶う。
若い頃から日本に憧れたミロと、世界に先駆けてミロの魅⼒を⾒出した日本、両者の関係
はここからさらに深まっていくことになる。
ジュゼップ・リュレンス・イ・アルティガス、ジュアン・ミロ《花瓶》1946年 炻器 個人蔵
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ《絵画》1966年 油彩・アクリル・木炭、キャンバス ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
Fundació Pilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
ジュアン・ミロ 《マキモノ》1956年 捺染、絹 町田市立国際版画美術館
©Successió Miró/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 E4304
4 ミロのアトリエを飾る日本の民芸品が里帰り。
ミロの制作の原点であるカタルーニャの農村モンロッチのアトリエや、晩年を過ごしたマジョルカ島のアトリエに飾られていた⽇本の品々は、ミロの創作意欲を大いに刺激した。
また本棚には書やはにわ、茶道、⽇本庭園など⽇本の文化にまつわる画集が数多く収められていた。
友人たちから贈られたものからミロ自身が購入したものまで、これらの貴重なミロ旧蔵資料が数十年ぶりに日本に⾥帰りする。
ゴッホやロートレックも日本にあこがれていたが、来日することは叶わなかった。
ミロは73歳の年に、自身の展覧会開催に併せて来日できた。
彼らに比べ遅く生まれたことと長生きできたことや時代の流れが、来日を実現できたことの理由の要素になるであろう。
以前、ミロの故郷、バルセロナに筆者は出向いたが、当地ではミロと日本という切り口で示されていることはほとんどなかった。
この展覧会は、ミロが「長い間、夢みていた」という日本での、20年ぶりとなる大規模な回顧展だ。
そして、その着眼点は美術史上、有意義なものとなるであろう。
この展覧会で、ミロと日本の関わり合いがつまびらかになる。
渡辺喜平《こけし(土湯系)》1941年9⽉以前 木 スクセシオ・ミロ
《佐賀杵島山 一刀彫のカチカチ⾞》1966年以前 木 ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
Fundació Pilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive
《讃岐高松の鯛狆》20世紀 張子 ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
FundacióPilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive
《鹿児島神宮(大隈正八幡)の初鼓》20世紀 紙、木 ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
Fundació Pilar i Joan Miró a Mallorca Photographic Archive
【会 期】 2022 年4月29 日(金・祝)〜7 月3日(日)(57 日間)※一部展示替えあり
【会 場】 愛知県美術館(愛知芸術⽂化センター10 階)
【開館時間】 10:00~18:00 金曜は20:00 まで(入館は閉館の30 分前まで)
【休 館 日】 毎週月曜日
【観 覧 料】 一般1,800(1,600)円
高校・大学生1,200(1,000)円
中学生以下無料
※( )内は20 名以上の団体料金。
※上記料金で本展会期中に限りコレクション展も観覧可。
※身体障害者⼿帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(愛護手帳)、特定医療費受給者証(指定難病)のいずれかをお持ちの⽅は、各券種の半額。また付き添いの⽅は、各種⼿帳(「第1種」もしくは「1級」)または特定医療費受給者証をお持ちの場合、いずれも1 名まで各券種の半額。
当日会場で各種⼿帳(ミライロID 可)または受給者証をご提⽰のこと。
※学生の⽅は当日会場で学生証をご提示のこと。
【主 催】 愛知県美術館、中⽇新聞社、東海テレビ放送
【協 賛】 アイシン、東海東京証券、ライブアートブックス
【協 力】 ヤマト運輸
【後 援】 スペイン⼤使館、インスティトゥト・セルバンテス東京、名古屋スペイン協会、JR 東海
【出品協力】 ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ
【問合せ先】 愛知県美術館 TEL 052-971-5511(代)
【出品点数】 約140 点
【同時開催】 愛知県美術館2022 年度第1 期コレクション展
☆愛知県美術館ホームページ
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/
☆特設ウェブサイト
☆スライドトーク(学芸員による展示説明会)
【⽇時】 2022 年6 月18 ⽇(土)各回11:00-11:40
【会場】アートスペースA(愛知芸術⽂化センター12階)
【定員】各回70 名
※申込不要、聴講無料。
☆読者プレゼント
ご招待券 プレゼント
あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
締切:http://art-news-jp.jimdo.comにてUPした日の午前零時
発送をもって当選と代えさせていただきます。
☆ご意見・ご要望・ご感想のお願い
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あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
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【巡 回 先】 富⼭県美術館 2022 年7 ⽉16 ⽇(⼟)〜9 ⽉4 ⽇(⽇)予定