市川團十郎白猿
襲名記念
市川海老蔵展
成田屋の伝統を継ぐ歌舞伎俳優であり、映画やテレビドラマで多様な役を演じる表現者でもある十一代目市川海老蔵。
家族を愛するひとりの父親でもある、市川海老蔵。
2020年5月、十三代目市川團十郎白猿(いちかわ だんじゅうろう はくえん)襲名を前にした、"海老蔵"としての最後の機会となる展覧会が、大丸札幌店 7階ホールで開催されている。
海老蔵の公演については、以下などで記しているので参照されたし。
☆市川海老蔵 JAPAN THEATER
https://artnews.blog.ss-blog.jp/2015-10-24
また、2019年8月の「市川會」で、海老蔵の長女・麗禾(れいか)が四代目市川ぼたんを、叔母の二代目市川紅梅が初代壽紅(じゅこう)を、妹の三代目市川ぼたんが四代目市川翠扇(すいせん)を、それぞれ襲名する三代襲名披露を行った。
さらに、長男・勸玄(かんげん)が市川新之助を八代目として襲名し、成田屋親子同時襲名される予定。
近年は、家族を愛するひとりの父親として、特に妻・麻央が死去後は、「パパママ」として愛情たっぷりに子育てを行なっているさまは多くの共感と尊敬を集めている。
以下の画像はフォトギャラリーにて参照されたし。
十一世團十郎と十二世團十郎
市川海老蔵と堀越勸玄 ©松竹
この展覧会は、歌舞伎俳優として、ひとりの人間としての市川海老蔵の軌跡を紹介するもの。
成田屋360年の歴史の長さを示す市川團十郎家=市川宗家が代々継承する貴重な資料を展示。
市川團十郎家の「家の芸」として継承される「歌舞伎十八番」(かぶきじゅうはちばん)。
これは、初代團十郎・二代目團十郎・四代目團十郎がそれぞれ得意としていた荒事の演目18種を天保年間に七代目市川團十郎(当時五代目市川海老蔵)が市川宗家のお家芸として選定した歌舞伎演目だ。
今日、最も得意な芸や技のことを十八番(じゅうはちばん、おはこ)というが、この言葉は、「歌舞伎十八番」が語源だ。
歴代團十郎が得意とした荒事の姿など十八番の魅力を余すことなく衣裳や写真で示している。
荒事とは、元禄時代の江戸で初代市川團十郎によって創始された、荒々しく豪快な歌舞伎の演技のこと。
歌舞伎十八番の内『勧進帳』 ©松竹
市川團十郎家の家の芸として継承される「歌舞伎十八番」。衣裳や写真を展示し、歴代團十郎が得意とした荒事の姿など十八番の魅力を伝えている。
貴重な錦絵に描かれた歴代團十郎の数々から、その歴史の重さが感じられる。
歌舞伎を身近に感じて欲しいという思いから自ら企画製作を行う「ABKAI」や、映画監督の三池崇史氏とのタッグで話題となった「六本木歌舞伎」など、海老蔵が創造する新作歌舞伎を衣裳や映像とともに展示。
六本木歌舞伎」第二弾『座頭市』 ©松竹
海老蔵(パネル)と一緒に撮影できるフォトスポットや、歌舞伎十八番の内『暫』の大太刀(レプリカ)に触れられる体感コーナーも。
フォトスポット(イメージ) ©Takeshi Hanzawa
『暫』の衣装は、鬘、衣裳、大太刀を合わせた総重量63㎏。
その重さと同じ重さの米俵21個も展示されており、それを難なく演じる海老蔵のすごさには、驚かされる。
毎日、トレーニングにスイムにとコツコツ。努力の賜物だ。
歌舞伎十八番の内『暫』 ©松竹
まだ4歳の勸玄が母・麻央が死去後まもなく勸玄白狐として史上最年少で宙乗りを行なった時の衣装や、昨年の新春歌舞伎で父子三人が共演した時の衣装も展示。
これには改めて、勸玄や麗禾の小ささが感じられ、涙腺が緩む。
未来を託す子どもたちへの思いなどを映像と写真パネルで紹介。
十一世市川團十郎生誕百十年『牡丹花十一代』 ©松竹
襲名への意気込み、そして家族への思いを語った撮り下ろしインタビューの上映や、普段の楽屋の様子が再現された展示などもあり、見逃せない。
本展撮り下ろしインタビュー映像
海老蔵は、去年12月、成田山新勝寺で苦行を行なっている。
また、大晦日の深夜、来る年を前に「睨み」(にらみ)を成田山新勝寺で行ない、それはテレビを通して全国に放映された。
歌舞伎では、劇中、”附け打ち”と呼ばれる拍子木で床の上の板を叩く音に合わせて、役者が身体の動きを止め、首をぐるりと回して、正面に向きピタリと止まるのが、「見得」だ。
これは、舞台の演出方法の一つで、クライマックスで観客の視線を集めるために行われる。
ところが、成田屋の「睨み」は、通常の演目の中で行われるものではなく、襲名やお正月など
お祝いの際に祝賀として行う。
「ひとつ睨んでご覧にいれましょう!」
と言って、片肌を脱ぎ左手で三方を掲げ、右手はゲンコツのように握って胸の前に置き、ぐーっと睨む。
その時、片目は寄り目にもう一方の瞳は目の中央にある。
技としては他の役者もできるが、実際に「睨み」をするのは成田屋の役者だけだ。
すなわち、十二代目の團十郎が亡くなった今、十一代目の海老蔵だけが、にらみをする役者なのだ。勸玄は、まだ練習中ということを海老蔵はそのブログ(メンバーのみ)で明かしている。
その画像は、まだあどけなく愛らしい。
https://secret.ameba.jp/ebizo-ichikawa/amemberentry-12461282916.html
初代團十郎は、なかなか子供ができなかったので成田山新勝寺に参詣したところ男の子に恵まれた。
以降、成田山の熱心な信者になった。
初代團十郎は子供を授かったことを不動明王が祀られている成田山新勝寺に感謝し、『成田不動明王山』をという演目を上演し、その後も、『成田分身不動』を演じた。
團十郎が演じる不動明王の姿を観た観客は手を合わせて拝んだという。
その不動明王の演技の中から「睨み」が生まれ、成田屋の代々に大切な演技として
受け継がれたて来たのだ。
そして、今もなお「睨み」の演技は、単なる演出方法ではなく「邪気を払う」という特別なものとして、この「睨み」を見た人は、少なくとも一年は風邪をひかないといわれている。
海老蔵の亡き妻の麻央が、毎年恒例年末の「睨み」を行なってほしいと願っていたという。
2017年も2018年も麻央の思いを遂げられなかったが、2019年は出来た。
「睨み」は、本来、劇場に来た人のみのものであった。
しかし、劇場の入場料を払えない人でも足を運べない人でもテレビを通して「睨み」を見ることができるのだ。
「睨み」を見てから年が明ける。
ぜひとも、恒例行事にしていただきたいものだ。
海老蔵は、一日の始まりのブログに毎日以下の文章を書いている。
「今日も多くの方々が幸せで
愛を感じ楽しめる
最高の一日でありますように」
神仏に世の人の幸せを願ってから、自分のお願いをするようでないと本当の幸福はやって来ないと筆者は考えている。
海老蔵は、単なる役者というだけでなく、人々の幸福を願い、役が憑依する神官のような気持ちでストイックに日々過ごしているのであろう。
海老蔵は、昨年北海道公演を行ない、その温泉も大変気に入ったとブログで語っている。
また、子どもたちも楽しんだようだ。北海道は、思い入れのある地だろう。
この海老蔵展は、さまざまな地を巡って来たが、大丸グループでは、全国初の開催だ。
ブログから海老蔵を知った人も昔からの歌舞伎ファンもその人となりに触れることのできる展覧会だ。
襲名を前に海老蔵時代の集大成ともなる展覧会。
令和の時代に生きる我々は、歌舞伎歴史の瞬間をまもなく体験するだろう。
その前にぜひ鑑賞していただきたい。
お見逃しなく。
■開催場所: 大丸札幌店 7階ホール
■開催期間: 2020年1月4日(土)→15日(水)
※最終日は、午後4時30分まで(午後5時閉場)
■入場時間: 午前10時~午後8時(最終入場は閉場時間の30分前まで)
*最終日は、午後5時閉場
■入場料
一般:1,000円 (800円)
大高生:800円 (600円)
中学生以下:無料
入場料は税込、( )内は前売り券および10名様以上の団体、大丸・松坂屋のクレジットカード、大丸松坂屋友の会カード、ブライダルサークル会員証をお持ちの方。
■主催:市川海老蔵展実行委員会・松竹株式会社
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
締切:http://art-news-jp.jimdo.com
にUPした日の午前零時
発送をもって当選と代えさせていただきます。
会期が短いため、速達などでお届けには最善を尽くします。
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☆巡回予定
ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階特設会場
2020年2月16日(日)~3月1日(日)
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