サラ・ベルナールの世界展
THE WORLD OF Sarah Bernhardt
パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華
© 2018 『サラ・ベルナールの世界展』実行委員会 All Right Reserved.
“ベル・エポック” (美しき時代)と呼ばれる19世紀末から20世紀はじめの華やかなパリで、その象徴ともいえるフランスの大女優、サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt 1844-1923)。
サラ・ベルナールの華やかな世界を様々な側面からなどを探る展覧会が阪急うめだギャラリーにおいて好評開催中だ。
以下の画像はフォトギャラリーにて参照されたし。
アルフォンス・ミュシャ
《ジスモンダ》 1895年 リトグラフ・紙
堺 アルフォンス・ミュシャ館蔵(大阪府堺市)
W.&D. ダウニー 《街着姿のサラ・ベルナール》 1902年 写真 個人蔵
サラ・ベルナールは、19世紀末から20世紀初頭、新芸術様式“アール・ヌーヴォー”が輝き始めた頃、 演劇・芸術・ファッションで人々を魅了し、女優としてばかりではなく、自身のイメージ戦略を打ち出すプロデューサーであり、興業を主催する事業家、絵画や彫刻の制作を行う多才なアーティストでもあったのだ。
サラ・ベルナールは、1860年代にデビューし、パリで一躍有名になる。
彼女の名声の端緒となったのは、『過ぎ行く人』の吟遊詩人役を好演したこと。
人々から“黄金の声”と讃えられた。
また、文豪ヴィクトル・ユゴー(Victor-Marie Hugo 1802 -1885)作『リュイ・ブラース』(Ruy Blas)の主演を務めたことにより女優としての地位を不動のものとした。
更にジャン・コクトー(Jean Cocteau 1889-1963)には、“聖なる怪物”と呼ばれ、劇場の女帝の異名を持ち、広く名声を博した。
1894年、当時無名の画家だったアルフォンス・ミュシャ(Alfons Maria Mucha, 1860-1939)に、サラ・ベルナール主演の劇曲『ジスモンダ』(Gismonda)のポスター制作の依頼。
アルフォンス・ミュシャは豪華で装飾性の高いポスターを制作。
そのポスターは人気となり、またたく間に、アルフォンス・ミュシャは”アール・ヌーヴォー”の代表的な芸術家となった。
サラ・ベルナールのポスターに用いられたアルフォンス・ミュシャ独自のスタイルは、演劇世界だけではなく、消費社会の到来に合わせて、例えばフランスの国民的ビスケット“ルフェーブル・ユティル社LU”など商品のポスターにも応用されて行ったのだ。
また、ルネ・ラリック(René Lalique 1860-1945)も、サラ・ベルナールに才能を見出された一人。
1894年、サラ・ベルナールの舞台装飾をきっかけに、プライベートの装飾具も手掛け、ジュエリー作家としての道が開けて行った。
1900年のパリ万博において、ルネ・ラリックは見事グランプリを受賞し、アール・ヌーヴォーを牽引して行く存在となるのだ。
サラ・ベルナールは、イギリスやアメリカでも一座を率いて大興業を主催し事業家として成功。
その後、豪州などをはじめ五大陸にもおよぶ世界各国で巡業公演を行い、国際的なスターとなる。
また、1870年に始まった普仏戦争の際には、当時の劇場「オデオン座」を国や財界の支援を受け、病院として開放するなど、女優や興行主以外の面でも活躍。
そのような社会に対しても貢献する姿が、多くの人々の尊敬を集めた。
サラ・ベルナールは、生涯を通じて「舞台芸術」に献身し、死去の際には国民葬とも言える葬儀が行われたほどだ。
サラ・ベルナールの芸術表現ともいえる「舞台」(衣裳・装身具など)を中心に、アルフォンス・ミュシャ作のアール・ヌーヴォー様式の流麗なポスター、衣装やルネ・ラリック作の装身具、記録写真、映像、肖像画など、約100点を超える作品や資料により紹介する日本初の展覧会だ。
監修および企画・構成は、フランス側は、美術史家のピエール=アンドレ・エレーヌ(マキシム美術館学芸部長)。
マキシム美術館がオープンした直後、筆者らに丁寧に案内および説明をしてくれたその人だ。
17世紀には第5代リシュリュー公爵アルマン・エマニュエル・ソフィー・セプティマニー・ド・ヴィニュロー・デュ・プレシ(Armand Emmanuel Sophie Septimanie de Vignerot du Plessis, 5e duc de Richelieu,1766-1822)が所有し、今では歴史的建造物に定められている建物、レストラン「マキシム」(Maxim's)の上階、4階と5階にある美術館だ。
1981年、世界的ブランドの服飾デザイナーで、アール・ヌーヴォーの熱烈な愛好家でもあるピエール・カルダン(Pierre Cardin、1922年-)が買い取る。
マドレーヌ広場とコンコルド広場の間に位置し、バス亭も目の前。
ピエール・カルダンの「コレクション1900」をただ単に展示するだけではなく、ベル・エポックの高級娼婦の豪華なアパルトマンが再現されている。
☆マキシム美術館(Musee Art Nouveau Collection 1900 - Maxim's)
https://maxims-de-paris.com/en/le-musee
丁寧にかつ詳細にサラ・ベルナールやその子孫の現在まで話してくれたピエール=アンドレ・エレーヌが監修する展覧会なので興味深い。
マキシム美術館に展示されているものがおおかた出展されているのではないかと予想を立てて取材に赴く。
が、見事、いい意味で裏切られた。
フランスのエタンプ市美術館はじめ箱根ラリック美術館や個人蔵の珍しい作品が多く展示されているのだ。
サラ・ベルナールは、自身の姿を入念にプロデュースした。
それを物語るひとつのエピソードは、プライベートから舞台まで、様々な衣装に着飾った姿の写真は、舞台の様子を撮ったものではなく、写真用に再撮影したものということだ。
そして、それらをW.&D. ダウニー(William Downey 1829–1915)やナダール(Nadar 1820-1910)など有名写真家に依頼している。
また、彼女を取り巻く人々の写真からは、サラ・ベルナールの交友の広さがうかがい知れる。
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri Marie Raymond de Toulouse-Lautrec-Monfa 1864 -1901)をはじめ、同時代の様々な画家たちによって描かれたサラの肖像画や彼女が使用した豪華な身の回りの品々、サラのドレスをデザインしたジャック・ドゥーセ(Jacques Doucet 1853–1929)によるイブニングドレスは見逃せない。
さらに演劇『遠国の姫君』で使用され、アルフォンス・ミュシャとルネ・ラリックが共同で制作したユリの冠は、この展覧会の目玉といえよう。
これは、箱根ラリック美術館所蔵というのも日本人としてうれしい限りだ。
デザイン:アルフォンス・ミュシャ
制作:ルネ・ラリック
舞台用冠《ユリ》
(エドモン・ロスタン作『遠国の姫君』にて使用)
1895年頃 金属、真珠、ガラス
箱根ラリック美術館蔵
またミュシャがデザインした《蛇のブレスレットと指輪》などのアクセサリーをはじめ、ポスター、写真、プログラムも展示されている。
サラ・ベルナール自身が創作者として活躍したことを伺わせる作品や、当時の芸術家など多くの人々に彼女が影響を与えたことが分かる資料も展示。
この展覧会が、賞賛に値するのは、サラ・ベルナール賛美一色ではなく、ユダヤの出自、家族の金銭問題、愛人関係、足の切断、皮肉なカリカチュアなど負の部分にもきちんと目を向けていることだ。
そして、会場スタッフのてきぱきとした中に心からの親切さが感じとれる応対は、「美しいもの」を鑑賞しに来ている人たちをより一層心豊かにさせてくれる。
☆構成
第一章
サラ・ベルナールに関する写真や肖像画、身の回りの品々
第二章
サラ・ベルナール出演の演劇に関わる作品
第三章
サラ・ベルナールと深い関わりのある芸術家の作品、またサラの様々な側面を伺える作品
◎2019年3月16日〜3月25日
阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー
日~木曜日=10:00~20:00
金・土曜日=10:00~21:00
※閉場30分前までにご入場のこと。
※催し最終日は午後6時閉場
入場料:大人800円、大学、高校、中学生600円、小学生以下無料
阪急お得意様カード、ペルソナカード、エメラルドSTACIAカードのご呈示でご本人様に限り、入場料から100円割引
☆阪急うめだ本店
http://www.hankyu-dept.co.jp
☆☆阪急うめだギャラリー
http://www.hankyu-dept.co.jp/honten/event/index.html
☆公式サイト
https://www.sunm.co.jp/sarah /
◎主催
阪急うめだ本店、産経新聞社
◎後援
在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
◎特別協力
フランス / エタンプ市美術館、ピエール=アンドレ・エレーヌ、ダニエル・ラドゥイユ
日本 / 公益財団法人 堺市文化振興財団 堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)、箱根ラリック美術館、京都工芸繊維大学美術工芸資料館、リボリアンティークス
◎監修 / 企画・構成
ピエール=アンドレ・エレーヌ(マキシム美術館学芸部長/美術史家)
岡部昌幸(帝京大学文学部史学科教授、群馬県立近代美術館館長)
◎助成
笹川日仏財団
◎運営協力
「サラ・ベルナールの世界展」実行委員会初
◎企画協力
株式会社燦京堂
☆同時開催フランスフェア2019 今年は10日間! 南仏プロヴァンスをクローズアップ。
その中でも筆者が注目したのが、エシレ バター(Échiré)。
フランス中西部・エシレ村で生産されるエシレ バターは、乳酸発酵させてからつくるバターで、ヨーグルトのような軽い酸味があり香り高い。
エシレ酪農協同組合は1894年からバター作りをはじめ、代々伝わる乳酸菌を大事に使いながら、昔ながらの製法で変わらぬ味を守り続けている。
牛乳から作られるクリームは、殺菌・発酵の過程を経て、昔ながらの木製チャーン(攪拌機)の中でバターに練り上げられる。
現代ではステンレス製のチャーンが一般的だが、この木の持つ不思議な力が、口あたりの柔らかで滑らかな食感を生み出している。
エシレ バターは、上述のようにルネ・ラリックがグランプリを受賞した1900年のパリ万国博覧会において奇しくも1等賞受賞をはじめ、多くの万国博覧会で何度も受賞を重ねている。
EUがその土地の伝統的な農産品の保護を目的として、製造地域や原料、製造工程などの規定を満たした商品にのみ付与する認証、AOP。
エシレバターは、フランス政府からAOP認定を受けた数少ないバター生産地のひとつだ。
1979年にはフランス国内バター初AOC※を取得。
(2004年に規定変更となり、現在はAOPとして認定されている。)
エシレ バター専門ショップは、関西では阪急うめだ本店のみ。
もちろん、フランスフェア2019に出店している。
サラ・ベルナールの時代から現代まで伝統を受け継ぐエシレ バター。
フランスでも品薄で、なかなか手に入らない逸品だ。
まさに食の芸術品ともいえる。
阪急うめだ本店のフランスフェアは、フランスに行けば存在する店舗ばかりで、日本など他国で企画したいわゆるフランス風の品は一切置いていないと、米田進悟 阪急うめだ本店広報担当は胸を張る。
展覧会とフランスフェアのマリアージュ。
この阪急うめだ本店で行われている展覧会の特徴を表わしている言葉かもしれない。
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
締切:UPした日の午前零時
発送をもって当選と代えさせていただきます。
会期が短いため、速達などでお届けには最善を尽くします。
☆巡回予定
この展覧会は、2018年9月〜群馬県立近代美術館を皮切りに堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館)を巡回して来た。
2020年1月頃まで、全国の美術館を巡回予定。
2019年3月28日〜6月30日 箱根ラリック美術館
☆ご意見・ご要望・ご感想のお願い
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あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:アートニューズ ご意見・ご要望・ご感想
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