追加記事
ランス美術館展
Exposition produite et gérée par le Musée des Beaux-Arts
de la VILLE DE REIMS.
ダヴィッド、ドラクロワ、ピサロ、ゴーギャン、フジタ…
ジャック=ルイ・ダヴィッド(および工房)≪マラーの死≫1793年7月13日以降、油彩/キャンヴァス Reims, Musée des Beaux-Arts ©MBA Reims 2015/Christian Devleeshauwer.
名古屋市美術館とランス美術館は2013年に友好提携の覚書を交わし、名古屋市とランス市は2017年10月20日に姉妹都市提携を締結!
両市の友好を記念して、3点の作品が特別出品!
パリから北東へ約140キロ、特急電車でわずか45分の距離にあるランス。
街の中心にあるノートルダム大聖堂は、歴代のフランス国王が戴冠式を行った由緒ある寺院として知られ、世界遺産にも登録されている。
シャンパンの産地としても知られているランスに200年以上の歴史を誇り、数多くの名品を収蔵するランス美術館。
そのコレクションは5万点を優に超えという。
その中から選び抜かれた約70点の名画を紹介する展覧会が、名古屋市美術館で好評開催中だ。17世紀から20世紀にかけて、西洋絵画300年の歴史をたどる作品群は、ドラクロワ、コロー、ミレー、ピサロ、ゴーギャンなどなじみの深い作家の作品が目白押しだ。
藤田嗣治は、ランスのノートルダム大聖堂でカトリックの洗礼を受け、シャンパン「マム」の社主のルネ・ラルーと、「テタンジェ」のフランソワ・テタンジェから「レオナール」と名付けてもらい、レオナール・フジタ(Léonard Foujita)となる。
晩年、ランスにあるマムの敷地内に建てられた平和の聖母礼拝堂、通称「フジタ礼拝堂(シャペル・フジタ)」の設計と内装のデザインを行なったことでも有名。
藤田嗣治と君代夫人は、この礼拝堂の地下に埋葬されている。
そういった経緯からランス市には近年藤田嗣治の遺族の元に秘蔵されていた作品がまとめて寄贈されたのだ。
ちなみに最期を見取った君代夫人は、没するまで藤田嗣治旧蔵作品を守り続け、藤田嗣治の作品の大半はポーラ美術館とランス美術館に収蔵されている。
この展覧会では、70点の出品作中、約30点を藤田嗣治の作品が占める。未公開だった作品が初公開されるものも。
※「平和の聖母礼拝堂(フジタ礼拝堂)」のための素描が出品。
藤田嗣治については、以下で記しているので参照されたし。
☆レオナール・フジタ ― ポーラ美術館コレクションを中心に
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2013-09-26-1
名古屋市とランス市の姉妹都市提携を記念して3点の作品が特別出品されているのもこの展覧会の大きな特色だ。この展覧会期間中の10月20日に姉妹都市提携を締結できたのも喜ばしい限りだ。
ランスはパリから飛行機で行くほどでもないし、かと言って電車で行くにはちょっと遠いという微妙な距離のところで、筆者は行きたいと願っているがまだ行ったことがない。
パリに行ったことのあるかたもランスへはまだまだ少ないと思われる。
ランス美術館収蔵の藤田嗣治の作品はまだ鑑賞した人も少なく、それが名古屋に来ている。
こんなチャンスを見逃す手はない。
このように美術界においても名古屋市とランス市の姉妹都市提携がなされるのは大変意義深いことなのだ。
さらにジャック=ルイ・ダヴィッド(Jacques-Louis David)および工房の『マラーの死』(La Mort de Marat , Marat Assassiné)とこの展覧会は、美術史上も歴史上も大変重要だ。
もともと、『マラーの死』はジャック=ルイ・ダヴィッド自身が、フランス革命の指導者、ジャン=ポール・マラー(Jean-Paul Marat)の死を描いた油彩画で、「政治的要素を材料に脚色をすることなく描かれた」初の近代絵画であると、T・J・クラーク(Timothy James Clark)に評されたものだ。
ダヴィッドは、君主制とカトリック教会の神聖なイメージを、新しいフランス共和国に取り込もうとしていたのであろうか。
この絵は広く称賛され、恐怖政治時代の指導者たちは作品の複製を数枚注文し、ダヴィッドの弟子が公房として制作したという。
しかし、政治的背景からダヴィッドの死去まで、これらの作品の存在は秘されていたのだ。
ダヴィッドの公房により描かれた作品の正確な数は明らかではないが、ディジョン、ランス、ヴェルサイユの美術館に現存しているという。
この展覧会では、そのうちのランス美術館所蔵のものが展示されている。
謎に満ちた運命をたどり、政治に翻弄された名画が、日本の名古屋市美術館に展示されていることが、美術史上も歴史史上も大変重要だという筆者が申す理由だ。
『マラーの死』は、垂れさがった細い腕が、両作品に共通することからミケランジェロの『ピエタ』と比較される。
ダヴィッドはカラヴァッジオの作品、特に『キリストの埋葬』を称賛しており、『マラーの死』のドラマと光にもその影響が見られる。
ルーブル美術館収蔵の縦6.1メートル、横9.3メートルの大作《ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠》を描くなどナポレオンの首席画家として活躍したが、ナポレオン失脚後にブリュッセルへ亡命を余儀なくされたダヴィッド。
ジャック=ルイ・ダヴィッド自身の筆による『マラーの死』は、1886年、遺族の申し出によりベルギー王立美術館(Museesroyaux des beaux-arts de Belgique)に展示されている。
ベルギー王立美術館については以下に記しているので参照されたし。
☆ベルギー王立美術館(Museesroyaux des beaux-arts de Belgique)
http://www.fine-arts-museum.be
☆マグリット展 René Magritte
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
19世紀中ごろになってシャルル・ボードレール( Charles-Pierre Baudelaire)らにより『マラーの死』は再評価された。
20世紀には、ピカソやムンクは自分自身でもマラーの死をテーマに作品を描くなど、『マラーの死』は画家や詩人、作家にも影響を与えたのだ。
筆者は、ベルギー王立美術館の作品は鑑賞したことがあるが、ランス美術館のものは、拝見したことがない。
恐らく、ランス美術館の作品は鑑賞した経験を持つ人は少ないと考える。
ジャック=ルイ・ダヴィッドおよび工房作の作品の質の高さには驚かされるであろう。
だからこそ、名古屋市美術館で開催されているこの展覧会の価値を理解していただきたい。
筆者の住む関西にはまったく来なかったこの展覧会。
名古屋だからこそできた特別出品。
在住のかたもそうでないかたも名古屋のよさをわかっていただきたい。
名古屋だけでなく他の地方からも訪れていただきたい展覧会だ。
お見逃しなく。
会期 2017年10月7日(土)~12月3日(日)
休館日:毎週月曜日
開館時間:午前9時30分~午後5時、金曜日は~午後8時(入場30分前まで)
会場 名古屋市美術館(名古屋市中区栄2-17-25 芸術と科学の杜・白川公園内)
主催 名古屋市美術館、中日新聞社
後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、愛知県・岐阜県各教育委員会、名古屋市立小中学校PTA協議会
協力 エールフランス航空、ヤマトロジスティクス、G.H.マム、名古屋市交通局、近畿日本鉄道
企画・監修 ランス美術館
企画協力 ブレーントラスト
観 覧 料
当 日 団体
一般
1,400円 1,200円
高大生
1,000円 800円
中学生以下
無 料 無 料
※団体割引料金は20名以上に適用
☆美術館ホームページ
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
☆特設ウェブサイト
http://www.chunichi.co.jp/event/reims/
☆作品解説会
☆ボランティアによるギャラリートーク
11月23日[木・祝]、25日[土]、30日[木]
10:30~/13:30~(約60分)
※展覧会観覧券で参加可。会場入口に集合。
※都合により休止することあり。
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