追加
<特別展>
白洲正子ときもの
撮影 浦 典子
88年の生涯を通じて独自の美意識を貫いた随筆家・白洲正子(1910-1998)。
白洲正子が母から受け継いだ帯や能舞台に立った時の着物、白洲邸武相荘での暮らしぶりを感じさせる季節ごとの着物や和装小物などを展示した展覧会が、阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリーにおいて9月27日(水)から開催中だ。
白洲正子は伯爵の父、樺山愛輔と母・常子の次女として生まれ、6歳より五十四世 梅若六郎に本格的に師事し能の世界に触れて育ち、女性として初めて能楽堂の舞台へあがる。
白洲次郎と結婚し、戦後は文学、骨董の世界に踏み込んでいく。
著書に『能面』『かくれ里』など。
生涯を通じて、権威や世評に とらわれない独自の“美”の世界を確立。1964年(昭和39年)随筆『能面』で第15回読売文学賞受賞。
1972年(昭和47年) - 随筆『かくれ里』で第24回読売文学賞受賞。
著書「十一面観音巡礼」で“美しい”と記した円空仏「三十三観音立像」は、2013年に開催された『東京国立博物館140周年 特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」』にて展示された。
筆者は以下で記しているので参照されたし。
〇『東京国立博物館140周年 特別展「飛騨の円空―千光寺とその周辺の足跡―」』
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2013-03-19
また、白洲正子は『かくれ里』において忍者の里、滋賀県甲賀市 福生山(ふくしょうざん)に位置する櫟野寺(らくやじ)周辺を「かくれ里」とも呼びこの櫟野(いちの)の地を紹介した。
昨年の2016年、同じく東京国立博物館で開催された特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」の展覧会でもこのことは言及されていた。
筆者は以下で記しているので参照されたし。
〇「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」
https://art-news-jp.jimdo.com/https-art-news-jp.jimdo.com-2016-11-23-平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23
櫟野を白洲正子が紹介してから四十余年。多くの鑑賞者が訪れ大成功を収めた展覧会であった。
改めて白洲正子の先見の明を感じさせられたものだ。
さて、白洲正子が実際に身に着けた“きもの”などが展示されている阪急うめだギャラリーで行われている展覧会では、白洲正子の産着から能衣装まで貴重な品々が展示されている。
作家 小林秀雄、洋画家 黒田清輝や梅原 龍三郎、芹澤銈介、イブ・サンローラン、など華麗な交流を示す品々が見どころだ。
母・常子の著書や歌集の装丁を杉浦非水や安田靫彦が行なっており、また、黒田清輝が挿絵を描いた著書が展示されている。
杉浦非水(ひすい)や安田靫彦(ゆきひこ)については以下で記しているので参照されたし。
☆愛媛県美術館所蔵 杉浦非水―モダンデザインの先駆者―
https://art-news-jp.jimdo.com/2017/05/16/愛媛県美術館所蔵-杉浦非水-モダンデザインの先駆者/
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2017-05-16
☆遊亀と靫彦 ─師からのたまもの・受け継がれた美─
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2014-11-22-1
現在、東京国立博物館所蔵の黒田清輝の代表作「湖畔」。重要文化財に指定されている名画だ。
1900年のパリ万国博覧会に黒田清輝の他の作品『智・感・情』とともに出品された。
また、美術の教科書に掲載されているので見た人も多いであろう。1967年発行の15円切手にもなっている。
筆者の母方の祖父は美しい切手を収集するのが好きで、筆者への手紙には必ず記念切手を貼って送って来てくれた。その中にこの切手があったことが思い出される。
この作品が、白洲正子の実家、「永田町の樺山家邸内の客間に掛けられていた。」とこの展覧会のキャプションに書かれていた。
この絵のモデルのことはよく言及されているが、所有者がどこに飾っていたかまで言及されていることは極めて稀だ。
黒田清輝の死後、黒田清輝の養父である黒田清綱の娘千賀子の婚家、橋口家の血縁にあたるため樺山愛輔は、遺言執行人となった。
黒田清輝は遺産の一部を美術奨励事業に提供することを遺言したため、遺言執行人樺山愛輔は東京・上野公園内に美術の基礎研究機関として、1928年に黒田記念館を開設。1930年には同館に帝国美術院附属美術研究所が設置された。
1933年、樺山愛輔の寄贈した「湖畔」は、初めて「湖畔」という題名として台帳に記載され、今日に至っているのだ。
ちなみにそれまでは『避暑』という名称で出品されていた。
また、同じく東京国立博物館所蔵の黒田清輝の「読書」。黒田清輝がフランス滞在中に手がけた初期の代表作だ。
1891年、フランス芸術家協会(ラ・ソシエテ・デ・ザルティスト・フランセ)主催のサロンに出品され見事入選した作品。
こちらは、「永田町の樺山家邸内の食堂に掛けられていた。」とこの展覧会のキャプションに書かれている。
また、この展覧会では、黒田清輝が樺山家の御殿場別荘に滞在した際に制作した「御殿場の小道」が展示されている。
右下にフランス語で「従兄の樺山愛輔へ」と記されている。
書机には、白洲正子の自筆原稿や筆記用具が展示されているのも魅力的だ。
この展覧会は、松屋銀座からの巡回展だが、阪急展のみの展示は、白洲次郎のジャケットだ。
「背広」の語源とも言われるサヴィルロウ(Savile Row)。サヴィルロウ最古のテーラー、ヘンリー・プール(HENRY POOLE)製だ。
手縫いのビスポークは、老舗の格式と着ていた人の人となりを感じさせている。
ビスポークとは「注文の~」という意味。語源は、顧客がテーラーに「話を聞かれながら= be spoke」服を仕立てていくことに由来するといわれる。
白洲正子の“きもの”の展覧会を取材に行ったつもりだったが、思いのほか美術史の重鎮のオンパレードで大変勉強になった。
白洲正子の器や書斎で愛用した品々など、約150点を展観。紙面で書ききれないほどの貴重な品々が所せましと並んでいる。
一点一点、注意深く鑑賞していただきたい。
白洲正子の言葉は、深い。心に残る
自立した女性の先駆けの白洲正子。その生き方と着こなしを学びたい。
なお、この展覧会は、今まで行われた展覧会とまったく違う。
会場も松屋銀座と阪急うめだ本店のみ。
今のところ他に巡回する予定はない。
ぜひ、お見逃しなく。
会期:2017年9月27日(水)~10月9日(月・祝)
会場:阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー
住所:大阪府大阪市北区角田町8-7
時間
日〜木曜日:午前10時~午後8時
金・土曜日:午前10時~午後9時
※閉場30分前までにご入場のこと。
※催し最終日は午後6時閉場
※会期中無休
入場料
一般800円、学生600円、小学生以下無料
※阪急阪神お得意様カード・ペルソナカード・エメラルドSTACIAカードのご提示で、ご本人様に限り入場料から100円割引
※障がい者手帳(身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳、被爆者保健手帳)を
ご呈示の方、及びその介添えのために同伴者1名様まで無料。
問合せ
阪急うめだ本店
電話(06)6361-1381
☆阪急うめだ本店
http://www.hankyu-dept.co.jp/honten/event/index.html
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