大エルミタージュ美術館展
オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち
Old Masters from the State Hermitage Museum
ルカス・クラーナハ
《林檎の木の下の聖母子》
1530年頃 油彩、カンヴァス
© The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18
世界3大美術館のひとつ、エルミタージュ美術館。1990年に世界遺産(サンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群)に包括登録され、サンクトペテルブルクの象徴、いや、世界の美術の象徴だ。
1764年にエカテリーナ2世(在位1762-1796)が取得し、美術館の基礎となったコレクションから、歴代皇帝が国家の威信をかけて収集した美術品、個人蒐集家のコレクションまで、エルミタージュ美術館の所蔵品はおよそ310万点。
そのうち絵画作品だけでも1万7千点に及ぶ。
その膨大な絵画コレクションの中から、エルミタージュ美術館の決定版ともいえる オールドマスターの傑作勢揃いの展覧会が、愛知県美術館で開催中だ。
オールドマスターとは、16世紀ルネサンス時代のティツィアーノ、クラーナハなどから17世紀バロックのレンブラント、ルーベンス、ヴァン・ダイクなどを経て、18世紀ロココのヴァトー、ブーシェなどに至る巨匠たちを指す。
過去の大エルミタージュ美術館展について筆者は以下で記しているので参照されたし。
☆エルミタージュ美術館所蔵 皇帝の愛したガラス展
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2011-11-09
☆大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-11-27
以上の記事を書いたころより緩和されたとはいえ、ロシアへ行くには、ヴィザの取得が難しく、煩雑だ。また、現地での行動を報告しておかないといけないなどと制約がきついため、なかなか自由がきかない。
そんなわけで日本にいながらにしてそのコレクションを見られるこの展覧会は、大変おすすめだ。
1764年、エカテリーナ2世がベルリンの実業家ヨハン・エルンスト・ゴツコフスキー(1710-1775)から317点の絵画を取得した年とされている。
これまでエカテリーナ2世は、ロシアの国力を誇示すためにこれらの作品を購入したというのが通説だった。
しかし近年になって、これらはもともと、プロイセン王フリードリヒ2世のためにゴツコフスキーが集めたものの、七年戦争(1756-1763)でプロイセンが敗北したことにより行き場を失い、ロシアとの巨額の取引に巻き込まれたゴツコフスキーが借金の肩代わりに女帝に売却した、ということが明らかになって来た。
エカテリーナ2世は、強大な財力と絵画への深い理解に加え、フランスの啓蒙思想家ヴォルテールや、美術評論家など、国内外の目利きの助言を参考に精力的に収集を続け、34年の治世の間に収集した絵画作品は、約2,500点ともいわれている。
この展覧会には、
エカテリーナ2世の最初のコレクションに含まれていたのがフランス・ハルスの《手袋を持つ男の肖像》
息子パーヴェル1世(在位1796-1801)が母のために購入したポンペオ・ジローラモ・バトーニの《聖家族》。
が展示されている。
さらにその後、この美術館の形成に多大な貢献をしたパーヴェル1世の息子アレクサンドル1世(在位1801-1825)やニコライ1世(在位1825-1855)が収集した作品も出展されている。
絵画収集の歴史や、名画の裏側に隠された想い、皇帝の嗜好などを知ることも、この展覧会を鑑賞の楽しみの一つだろう。
さて、数あるエルミタージュのコレクションのなかでも、特に充実しているのが、オールドマスターの作品群といわれる。
時代はさかのぼって、サンクトペテルブルクの街を建設したピョートル1世(大帝、在位1682-1725)は、オランダ絵画を大量に購入した。
その後、前述のエカテリーナ2世が、オランダ、フランドルを中心に、ヨーロッパ絵画の流派をほぼ網羅するコレクションを築いたのだ。
これらオールドマスターの傑作は、今もエルミタージュの所蔵品の中核をなすものだからだ。
この展覧会で展示されている油彩85点すべてがエルミタージュ美術館の常設展示作品、すなわち美術館の顔ともいうべき作品群という。
展覧会では、これらは国、地域別に展示されている。
西洋絵画の王道ともいえる珠玉のコレクションは、まさにエルミタージュ美術館展の決定版。
さらにこの展覧会では、系統だって鑑賞できるので、エルミタージュ美術館所蔵の名作を鑑賞しながら、西洋絵画の歴史や位置づけをも学ぶことができる。
まさに一石二鳥の展覧会だ。
ちなみに 2014年12月には、創立250年を記念して新しい展示室が公開された。
エルミタージュ前の宮殿広場を挟んで建つ旧参謀本部が大規模に改修され、印象派を始めとするフランス近代絵画の展示室となったのだ。
モネ、ルノワール、マティス、ピカソなど、これらの作品群は、ロシアの実業家、シチューキンとモロゾフが集めたもので、エルミタージュが世界に誇るフランス近代絵画のコレクションだ。
このように250年の歳月がつくり上げた「美の百科事典」エルミタージュ美術館。
その進化は、留まるところを知らない。
行きにくい国の展覧会が日本に来た時に逃さないのは、最も効率的に美術を鑑賞するための秘訣でもある。
ぜひ、お見逃しなく
会期
2017年7月1日(土)~9月18日(月・祝)
休館日
・毎週月曜日
9月18日(月・祝)は開館
開館時間
午前10時~午後6時
金曜日は午後8時まで(入館は閉館時刻の30分前まで)
会場
愛知県美術館 [愛知芸術文化センター10階]
〒461-8525 名古屋市東区東桜1-13-2
☆展覧会特設サイト
http://www.ctv.co.jp/event/hermitage
☆愛知県美術館 公式サイト
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition
お問合せ
中京テレビ放送 事業局 052-588-4466(平日9:30~17:30)
主催
愛知県美術館、エルミタージュ美術館、中京テレビ放送
後援
外務省、駐日ロシア連邦大使館、ロシア連邦交流庁(Rossotrudnichestvo)
特別協賛
大和ハウス工業
協賛
光村印刷、損保ジャパン日本興亜
協力
フィンエアー、フィンエアーカーゴ、日本貨物航空、日本通運
☆スライドトーク(学芸員による展示説明会)
[日時]2017年8月20日(日) 11:00~11:40
[会場] アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
[定員]各回150名
※申込不要・聴講無料、開始時刻に会場にご集合のこと。
☆太っ腹企画
☆ウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》のみ、会期中、展示室内で写真撮影が可能!
☆毎週金曜日は大エルミタージュ美術館展すべての作品が撮影OK!
【撮影時の注意】
・フラッシュ、三脚、自撮り棒は使用不可。
・ピントを合わせる際の光(AF補助光)はOFFに設定。
・動画の撮影は不可。
・作品の安全と他のお客様の妨げにならないように。
・撮影時のシャッター音に御配慮のこと。
スマートフォンのシャッター音はスピーカーをシールで隠すことで弱音化可能。監視員にご相談のこと。
※混雑している場合など、主催者の判断により中止の場合あり。予めご了承ください。
【写真のご利用について】
・営利目的は、不可。
・作品の写真を加工・変更不可。
・写真を公表される際は自己責任。主催者は一切の責任を負わず。
・写真に他のお客様が写っている場合、その写真の公表にあたっては肖像権に触れる場合があり。ご注意のこと。
☆読者プレゼント
5組10名様にご招待券 プレゼント
あて先 :loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
締切:http://art-news-jp.jimdo.comにてUPした日の午前零時
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発送をもって当選と代えさせていただきます。
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