あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術

 

あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術

 

      撮影 浦 典子           

 

   1956(昭和31)年、パリで活躍する美術評論家ミシェル・タピエ(  Michel Tapié)がセレクトし、「アンフォルメル」(Art informel)と名付けた未定形の芸術群が、日本に上陸した。

 

これらは、当時の欧米の最新の美術作品であった。

 

フランスを中心としたヨーロッパ各地では激しい抽象絵画が多く、アメリカ合衆国ではアクション・ペインティングなど抽象表現主義の運動が活発であった。

 

「もはや戦後ではない」が流行語となった時代、日本の芸術家にもそのムーヴメントは強烈な衝撃を与えた。それは、洋画や彫刻のみならず、日本画や陶芸、生け花といった日本の伝統的な表現ジャンルにもおよび、アンフォルメルの"熱い"表現が爆発的に流行したのだ。

 

日本の美術史上例を見ないほど熱かった時代の現象を21世紀の今、紹介しようとする展覧会が京都国立近代美術館で開催中だ。

 

ジャン・デュビュフェ(Jean Dubuffet)はアンフォルメルの先駆者とみなされ、従来の西洋美術の伝統的価値観を否定して、「生の芸術」を提唱した20世紀のフランスの画家だ。

 

子供、田舎の民衆芸術、アフリカなどの原始美術、精神障がい者などによる絵画をアール・ブリュット(Art Brut)=生の芸術と呼んで賛美した。

 

今もなお、フランスではアール・ブリュットこそ芸術とばかりに展覧会が積極的に開催されている。

 

ジャン・デュビュッフェ(190185)《ご婦人のからだ(「ぼさぼさ髪」)

 

デュビュッフェとともにアール・ブリュットの展覧会を企画した評論家ミシェル・タピエは、フランスのほかにもヨーロッパ各地やアメリカ合衆国において、表現主義的な激しい抽象絵画の波を受け、1951年にアメリカからアクション・ペインティングの画家、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングを招き展覧会を企画したのだ。

 

ジャクソン・ポロックについては、以下で記しているので参照されたし。

 

☆特別展 生誕100年ジャクソン・ポロック展

 

http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-01-14

 

http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-03-06

 

2006年にはポロックの作品が14000万ドル(当時のレートで約165億円)で売れ、それまでの芸術作品の史上最高額を叩き出し、「世界一価格の高い画家」と呼ばれている。

 

2012年の日本でのポロックの展覧会が大きな反響を呼んだことも事実だ。

 

そのポロックをヨーロッパ美術界に紹介した人物が、ミシェル・タピエだ。

 

この展覧会では、ミシェル・タピエの選択眼にかなった作品から「アンフォルメル」に影響を受けた日本の芸術家まで一人一作品というコンセプトで展示されている。

 

この展覧会の企画者である平井章一京都国立近代美術館主任研究員は、アートニューズの読者のためだけに以下のように話してくれた。

 

「当時の美術界における前衛的な動きを感じ取っていただきたい。16メートルにおよぶ篠原 有司男(しのはら うしお)の《ボクシング・ペインティング》は、その巨大さゆえに展示しにくい作品だ。

 

終戦後、わずか約10年のこのころは、今より熱かった。そんなエネルギーを感じていただきたい。

 

原則、一人一作品の展示にしたので、作家の紹介文やどの作品を選定するのかに苦心した。

 

壁を黒くし、照明を暗くしてスポットライトを作品に当て、作品が浮き上がって来るような展示に工夫をした。

 

そんな細かいところも併せて鑑賞していただきたい。」

 

 

 

吉原治良、堂本印象、高松次郎、工藤哲巳、白髪一雄、白髪一雄、岡本太郎、勅使河原蒼風、松谷武判など誰もが知る作家の作品も展示されている。

 

岡本太郎 燃える人 1955 油彩・キャンバス 東京国立近代美術館

 

パリ在住の松谷武判(まつたに たけさだ)の展覧会は、昨年の20151010日(土)〜126日(日)西宮大谷記念美術館にて開催されたばかり。

 

松谷武判は、筆者のインタビューに真摯に答えてくれ、ニューヨークの個展の準備が忙しい中、展覧会の図録を封筒書きも自筆で筆者に送って来てくれたことが思い出される。

 

この展覧会で作品を見つけた時には、衝撃が走る思いであった。

 

京都国立近代美術館の内覧会の後、九州に取材に上がったのだが、そこでも松谷武判の作品と出会えた。

 

この展覧会は、不思議なご縁を紡ぎ出してくれた。

 

 21世紀の今、保守に流れがちな美術。60年も前に今よりも前衛であった時代の熱さを教えてくれる展覧会だ。

 

この頃の作品にはパワーがあり、希望がある。今、この展覧会をしておかなければ、次世代に引き継げない。

 

美術史上、意義のある展覧会でもある。

 

この展覧会は京都国立近代美術館のみの開催。

 

お見逃しなく。

 

 

 

会期

 

2016729日(金)~ 911日(日)

 

開館時間

 

午前930分~午後5

 

 ※会期中の金曜日は午後8時まで開館

 

 (いずれも入館は閉館の30分前まで)

 

休館日

 

毎週月曜日

 

主催

 

京都国立近代美術館

 

観覧料

 

当日     前売り  団体(20名以上)

 

一 般 900   700      600

 

大学生 500   350      250

 

高校生・18歳未満 無料

 

 

 

※本料金でコレクション展も鑑賞可。

 

※心身に障がいのある方と付添者1名は無料。

 

  (入館の際に証明できるものをご提示のこと)

 

☆ギャラリー・トーク

 

日時:

 

94日(日) 午後1時~130

 

講師:平井章一京都国立近代美術館主任研究員(本展企画者)

 

会場:京都国立近代美術館 3階企画展示室

 

※聴講無料、要観覧券、開始10分前に1階インフォメーション集合。

 

 

 

☆京都国立近代美術館

 

www.momak.go.jp

 

☆読者プレゼント 

 

   1020名様にご招待券 プレゼント

 

   あて先 :  loewy@jg8.so-net.ne.jp

 

   件名:展覧会名と会場名

 

   本文:ご住所、お名前

 

   をお書きの上どしどしご応募下さい。

 

       締切:http://art-news-jp.jimdo.com にてUPした日の翌日午前零時

 

   発送をもって当選と代えさせていただきます。

 

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