特別展
石橋美術館物語
1956久留米からはじまる。
The Story of the Ishibashi Museum of Art:
Starting from Kurume in 1956
ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャンパルティエ嬢》
1876年 石橋財団ブリヂストン美術館蔵
画像提供 石橋美術館
石橋美術館としての最後の特別展が、2016年7月2日(土)から好評開催中だ。
というのも福岡県久留米市にある石橋美術館は、今秋より久留米市美術館として再スタートするからだ。
石橋美術館は、1956年の開館より、周囲の美術館環境の変化に合わせながら活動を続けて来た。まず、東西の名画を鑑賞できる美術館として。
次に青木繁・坂本繁二郎・古賀春江ら久留米出身の画家たちを紹介する美術館として。
そして、さまざまなイベントを通して楽しんでもらう場として、ヨーロッパの「文化サロン」のような役割を果たして来たのだ。
その60年間の来館者数は、約3,900,000人という。
この展覧会は、石橋美術館という名称での最後の展覧会にふさわしく、60年の活動を石橋財団コレクションでたどり、フィナーレを飾るもの。
石橋美術館関連の記事は、以下で記しているので参照されたし。
☆没後100年 青木繁展―よみがえる神話と芸術
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28
☆開館60周年記念 あなたに見せたい絵があります。-ブリヂストン美術館開館60周年記念
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-04-18
☆構成
◯東西の名画を
◯より多くの人に
◯坂本繁二郎・青木繁・古賀春江
◯久留米とともに
◯ともに楽しむ
☆見どころ
◯東西の名画を
九州にほとんど美術館がない時代、石橋美術館は、正二郎コレクションを公開するだけでなく、東西の名画を紹介する美術館としての役割も担って来た。
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃
石橋財団ブリヂストン美術館蔵
藤島武二《チョチャラ》1908-09年 石橋財団石橋美術館蔵
反響の大きかった特徴ある展覧会をピックアウトし、関連作品の他展覧会図録等も展示。
◯より多くの人に
館外展をとおし石橋美術館コレクションは、約390,000人に鑑賞された。石橋美術館で親しまれてきた作品群を図録、記録写真とともに展示。
青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年 石橋財団石橋美術館蔵
◯坂本繁二郎・青木繁・古賀春江
今までに開催してきた数々の展覧会と関連した出来事を資料とともに展示。
展覧会の他にも青木の《海の幸》の重要文化財指定による盛り上がりや、坂本の貴重な来館記録写真なども紹介。
坂本繁二郎《放牧三馬》1932年 石橋財団石橋美術館蔵
◯久留米とともに
久留米出身の作家についても発掘・顕彰して来た石橋美術館。展覧会を機に所蔵した作品も。
◯ともに楽しむ
これまでに石橋美術館が取り組んできた展覧会以外の活動は、 ゲストコーナーやギャラリートーク、コンサート、修復作業、調査、子供用ワークブックなどだ。写真と作品で振り返りながら、美術館のあるべき一つの姿を提案。
黒田清輝《針仕事》1890 年 石橋財団石橋美術館蔵
クロード・モネ《睡蓮の池》1907 年 石橋財団ブリヂストン美術館蔵
佐伯祐三《コルドヌリ(靴屋)》1925年石橋財団石橋美術館蔵
筆者は、このたび、初めて石橋美術館を取材に訪れた。直方の学芸員のかたに勧められ、歴史的瞬間を見届けなければという気持ちと子供の頃、教科書で見た青木繁の《海の幸》を巡回館で見るのではなくオリジナルポジションで鑑賞したいという気持ちだ。
京都国立近代美術館で、筆者はすでに《海の幸》を鑑賞している。
その記者内覧会で当時の石橋美術館館長から久留米に来て下さいとは言われていたが、遠く離れた久留米には行けそうにないと思っていた。
しかし、このたび福岡に取材に来るにあたり、ぜひとも伺いたいという気持ちが強くなったのだ。
青木繁《海の幸》1904年 石橋財団石橋美術館蔵
まず、門の前で驚いたのは、花々が美しく庭が美しく整えられている。
以下 撮影 浦 典子
進んで行くとパリのロダン美術館のような庭で美術館へ行く道に期待も高まる。
美術館前には、噴水を囲んで丸く花壇が設えられており、ベンチが並んでいる。まるでパリのグランパレのエントランスのようだ。
美術館の中ほどには休憩スペースがあり、ジヴェルニーのモネの池を彷彿とさせる。
ここが日本かと思うくらい、贅沢な空間だ。
展覧会の構成は大変よく熟慮されたもので、ただ単に所蔵作品を展示するのではなく、ストーリーを感じさせ見る者を惹きつける。
また、展覧会のタイトルにも注目だ。「1956久留米からはじまる。 」 とあるように現在形で書かれている。これは、過去形で終わらせるのではない。
この展覧会で一区切りをつけるが、終わってしまうのではなく、さらにこれから、「はじまる」のだという意味だ。
館外展の図録が展示されていたが、「ロートレック展」の図録を発見。これと同じものが筆者の実家の応接間にあった。若かりし日の母が友人と展覧会に行き、買い求めたものだ。筆者とは幼い頃、応接間にある図録を見るのが好きでよく見ていた。一目で我が家にあるものと同じだとわかった。
母は1968年の京都展を鑑賞したのだが、その図録に載っているロートレックの作品には筆者はなかなか出会えず、2014年フランスのアルビ美術館にて初めて本物に出会えた。
幼い筆者には、絵画のインパクトが大きく、それは今でも鮮明に覚えているのだ。
石橋美術館が関与していたとはつゆ知らず、不思議な縁を感じさせられた。
フランスの観光局の計らいでボスク城にてロートレックの母方の従兄弟ニコル・タピエ・ド・セレイラン(Nicole Tapié de Céleyran)にインタビューできたのだが、筆者らにジュースやクッキーを振る舞って下さり、一生懸命語っておられるお元気な様子が目に浮かぶ。
ロートレックについては、以下で記しているので参照されたし。
☆ベル・エポックを生きた夢二とロートレック 生誕130年 竹久夢二展
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
幼い子が見た図録。年を重ねても覚えており、このたびうれしい再会を果たすことができた。
教科書で見た青木繁の《海の幸》の鑑賞。
筆者のような体験をした人は多いに違いない。
芸術の持つ影響力の大きさを目の当たりにした感がある。
このように石橋美術館の芸術、教育において果たして来た功績は大きい。
鑑賞後、美術館の奥の庭園に行ってみた。坂本繁二郎旧アトリエが移築されており、小高い丘のベンチに座っていると時の過ぎるのを忘れるほどの穏やかな時間だ。
そよぐ風は、ペパーミントだ。
石橋美術館は、今秋久留米市美術館として再スタートする。さらなる飛躍を期待したい。
石橋財団の名品が集まった石橋美術館60年の歴史をたどる展覧会。
会期は8月28日(日)まで。
九州にお住まいの方はもちろん、帰省のかた、またこの機会に「そうだ、久留米に行こう!」と旅行を思い立ってでも訪れていただきたい。
福岡は、食べ物もおいしく、人も親切。
行って後悔はない。
会期
2016年7月2日(土) - 8月28日(日)
主催
石橋財団石橋美術館
後援
久留米市、久留米市教育委員会、公益財団法人久留米文化振興会
入館料 |
個人 |
団体 |
一般 |
800円 |
600円 |
シニア (65歳以上) |
600円 |
500円 |
大高生 |
500円 |
400円 |
中学生以下 |
無料 |
※団体料金は15名以上。
※障がい者割引あり。
休館日:月曜日
※本館のみでの開催
☆石橋美術館ホームページ
http://www.ishibashi-museum.gr.jp
☆読者プレゼント
10組20名様にご招待券 プレゼント
あて先 : loewy@jg8.so-net.ne.jp に
件名:展覧会名と会場名
本文:ご住所、お名前
をお書きの上どしどしご応募下さい。
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