うめだ文楽2016
当日券、若干あり!
撮影 すべて 浦 典子
開業 3周年を 2016 年 4月 26 日(火)に迎えるナレッジ キャピタル。先日、 3年間の活動成果発表会が開かれたばかりだ。
“「感性」と技術の融合により「新たな価値」を創出する活動体”として、さまざまな試みを実施して来ており、この3年間で、大阪発信の文化の中枢をなす存在として高い評価を受けている。
主催はどこかに限らず、筆者が紹介したナレッジ キャピタルで開催された主な展覧会は以下のとおり。参照されたし。
「THE世界一展」
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2013-08-22
グランフロント大阪 知的創造拠点「ナレッジキャピタル」 妖怪幻獣百物語
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2014-11-24
篠山紀信展 写真力
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2014-05-08
チョコレート展
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03
ティム・バートンの世界
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2015-04-12
ダ・ヴィンチ!天才の遺産 レオナルドと歩む未来展
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
その集大成ともいうべき公演が、『うめだ文楽』だ。
これは、2015年より、朝日放送や関西テレビ放送など在阪民放5局が文楽とタッグを組み、より分かりやすく、よりカジュアルに、その魅力を伝えようと始まった。
第1回の去年は、5公演すべて満員御礼と好評を博したという。第二回の今年は、当日券、若干ありとのこと。
筆者は、いろいろなかたがたのご協力を得ながら、少しずつ歌舞伎などを日本文化や芸術を勉強し始めたところなので、それを年齢の若いかたにもわかりやすく説明してゆきたいと考え、記事にしている。読者のかたがたからいただく多くのe-mailには、伝統文化を初心者の目線から噛み砕いた解説はとっつきやすいと励ましを得ている。ありがたい限りだ。
初心者も気軽に楽しめるのが、この『うめだ文楽』だ。というのも、トークショーとの二部構成で、笹岡隆甫、わかぎゑふ、三浦しをんなど多彩なゲストが日替わりで、技芸員とともに文楽の魅力や裏話をビギナーにもわかりやすく話してくれるからだ。
筆者が、取材にあがった初日15:00の公演には、華道「未生流笹岡」家元笹岡隆甫と三味線の鶴澤寛太郎が関 純子関西テレビ放送アナウンサーの司会のもと、楽しいトークを繰り広げた。
鶴澤寛太郎は、幼い頃、一ミリの世界を追求するような宮大工になりたかった、三味線の皮の種類や製作法、一丁のお値段など、関西ならではの突っ込んだ話に気さくに話していた。
ストレス解消法は、「質を伴った暴飲暴食」「人に迷惑にならない範囲の熱唱」という。
文楽は職人集団なので宣伝下手といい、少しでも人なりを知ってもらいたいとホームページ、インスタグラムなどをUPし、舞台以外の日常や「素性がわかる」ように身近にアクセスしてもらいたい、とのこと。
☆鶴澤寛太郎official site
https://www.instagram.com/kantaro_tsuruzawa_official
一方、笹岡隆甫のストレス解消法は、子供を連れての山登りで、山の上から見ると俯瞰でき、下界で起こっていることがたいしたことではない、と前向きになれるという。
若い人たちには、論理で説明し、わかりやすい言葉を心がけているという。
☆笹岡隆甫
華道「未生流笹岡」家元。京都ノートルダム女子大学客員教授。
1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。
3歳より祖父である二代家元笹岡勲甫の指導を受け、2011年三代家元を継承。
舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、国内外で花手前(いけばなパフォーマンス)を披露。近著に『いけばな』(新潮新書)。
公演終了後、笹岡隆甫はアートニューズの読者のためだけに、以下のコメントを語ってくれた。
「きちんと文楽を見るのは初めてだ。 若い方々だが、伝統に基づきながらもいい味わいを出していらっしゃることに感動した。真摯に向き合っておられる様子がひしひしと感じられた。
分野は違うが、大変勉強になった。若い力で、これからの文楽を盛り上げて行っていただきたい。」
☆未生流笹岡
http://www.kadou.net
【演目】
『傾城阿波の鳴門~十郎兵衛住家の段~(けいせいあわのなると~じゅうろべえすみかのだん~)』
【出演者】
太夫:竹本小住大夫
三味線:鶴澤寛太郎
人形:吉田幸助、吉田玉勢、桐竹紋吉、吉田玉誉、吉田簑次、吉田玉彦、吉田玉路、吉田簑之、吉田玉延
☆上演時間
1 部:約30分
休憩:約15分
2 部:約60分
*2部の上演開始後、演出上の都合により途中入場ができかねる場合あり。くれぐれもご注意のこと。
☆あらすじ 『傾城阿波の鳴門~十郎兵衛住家の段~けいせいあわのなると~じゅうろべえすみかのだん~ 』
阿波の十郎兵衛は城主の盗まれた家宝の刀を探すために、「銀十郎」という名の盗賊に身をかえて妻・お弓と大坂・玉造で暮らしている。お弓は、巡礼中の幼い女の子と会う。父母の名前から国に残してきた我が娘・おつると知りすぐに名乗ろうと思うが、 母だと名乗ればこの子は盗賊の娘となってしまうとお弓は何も伝えず娘を帰す。 遠ざかる幼子の巡礼歌を聞いてこのままでは今生の別れになってしまうと、お弓は後を追いかける。
一方、出かけていた十郎兵衛も入れ違いでおつると出会い・・・。
この演目は、文楽を初めて見るかたに最適で初心者向けといわれ、知識がなくともわかりやすい。
阿波藩のお家騒動の物語を、実在した十郎兵衛になぞらえて(擬して)浄瑠璃の作品にしたものといわれる。
明和五年六月大阪竹本座で初演。近松半二、竹田文吉らの合作といわれる。
母と子の悲しい別れのシーンは、義太夫節のもの悲しい声と三味線があいまって、感動へといざなう。
うめだ文楽2016は、この梅田という最高の立地で大阪の文楽をさらに多くのかたに知っていただく大変すばらしい公演だ。
人形浄瑠璃文楽は、日本を代表する伝統芸能の一つで、太夫・三味線・人形が一体となった総合芸術だ。成立ちは江戸時代初期にさかのぼり、古くはあやつり人形と呼ばれ、そののちには人形浄瑠璃と呼ばれて現在に至っている。竹本義太夫の義太夫節と近松門左衛門の作品により、大人気を得、竹本座が創設される。この後豊竹座をはじめいくつかの人形浄瑠璃座が盛衰を繰り返し、幕末、淡路の植村文楽軒が大阪で始めた一座が中心的な存在となり、やがて「文楽」が人形浄瑠璃の代名詞となったのだ。
大阪には、「粉もん文化」しかないと揶揄されたりする。しかし、「文楽」はまぎれもなく大阪の生んだ芸術だ。ユネスコにより2003年(平成15年)に「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」として宣言され、2008年(平成20年)に「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されている。
筆者は、高校生の時に学校から団体で鑑賞に行ったことがある。それ以降、遠ざかっていたが、バレエ、オペラ、歌舞伎など、他の芸術を鑑賞する経験を積んだ後に鑑賞した文楽は、衝撃的であった。太夫の語りと一体になって義太夫節の情を表現する三味線。人形一体を三人の人形遣いが操り、それらが舞台に上がっている様が見えるのは、世界でも例を見ないものである。
歌舞伎や浮世絵と文楽とのつながりを学びながら、鑑賞するともっと興味深いものになるであろう。
芸術的見地から、また、日本文化を保存し伝統文化として身近な存在に思って親しみを持っていただきたい、また、それぞれの出演者の尽力ぶりをもっと皆さんに知っていただきたいと思う。
筆者の上司が会場入りした際、とっさに「メルシー。」と言ってしまった。階段を登る際、係の男性が、「ムッシュが、お助けします。マダム、お手をどうぞ。」と手を引いて助けてくれたという。とっさに機知に富んだ「返し」をしてくれた会場スタッフのかたの笑顔も大変素敵で、演目もソツがなくすばらしい公演だったと上司は、ご満悦であった。
この公演は、演者のみならず、在阪民放5局やナレッジ キャピタルや会場スタッフが協力して作り上げている。大阪の底力、ここにあり。
それぞれの人の力で文楽を絶やしてはならないという責任感を感じた。
これからもうめだ文楽を続けて行っていただきたい。この『うめだ文楽』を鑑賞して一人でも多くの方に文楽鑑賞に足を運ぶきっかけになれば幸いだ。
2016年3月25日(金)~3月27日(日)
3月 25日(金) 26日(土) 27日(日)
11:00 ● ●
15:00 ● ● ●
19:00 ●
※開演時間。
☆ゲスト
●3月25日(金)
15時:笹岡隆甫(華道「未生流笹岡」家元)
19時:兵動大樹(漫才師)
●3月26日(土)
11時:桂 南光(落語家)
15時:コシノヒロコ(ファッションデザイナー)
●3月27日(日)
11時:わかぎゑふ(劇作家・演出家)
15時:三浦しをん(作家)
公演場所 ナレッジシアター(グランフロント大阪 北館4F)
料金 4,000円(税込)
※全席指定
※未就学児童の入場はご遠慮のこと。
【主催】
【協力】
国立文楽劇場/公益財団法人文楽協会
【協賛】
神宗 田中旗店 中央フードサービス
☆当日券について
各公演、若干枚数の当日券を販売。
販売時間:各公演、開演の1時間前より
販売場所:会場(ナレッジシアター)前 『当日券販売』ブース
☆ナレッジ キャピタル
http://kc-i.jp
☆国立文楽劇場/公益財団法人文楽協会
公演予定
4月文楽公演
2016年4月2日(土)~4月24日(日)国立文楽劇場(大阪)
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