チャイコフスキー記念 東京バレエ団「白鳥の湖」(ブルメイステル版)全4幕 千秋楽!
日本のバレエ史、塗り替わる!
ブルメイステル版「白鳥の湖」、日本のバレエ団として初めて公演!
画像提供:東京バレエ団 © Kiyonori Hasegawa
チャイコフスキー記念東京バレエ団(THE TOKYO BALLET)のブルメイステル版「白鳥の湖」の千秋楽が2016年2月17日(水)、兵庫県立芸術文化センター で開催された。
東京バレエ団は、1964年に創設され、3年目の1966年には当時のソビエト政府に招かれ、モスクワ、レニングラードで公演を行なった。
この成功によりソビエト文化省より"チャイコフスキー記念"の名称を贈られたため、正式名称は、「チャイコフスキー記念東京バレエ団」という。以下、東京バレエ団と記す。
古典の全幕作品からコンテンポラリーまでレパートリーの幅広さを誇り、30カ国153都市を巡り、とくにパリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラなどヨーロッパの名だたる歌劇場に数多く出演し絶賛を博した。
また、旧ソ連の三大歌劇場(ボリショイ、マリインスキー、シェフチェンコ)における公演では"謙虚に東京バレエ団に学ぶべきだ"との高い賛辞を獲得した。
このように海外での上演をほぼ毎年行なうなど、東京バレエ団は、日本が誇る実力、人気共に日本ナンバーワンと言われるバレエ・カンパニーだ。"日本の生んだ世界のバレエ団"といわれている。
『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』と共に3チャイコフスキー三大バレエの中でも最も古く有名な「白鳥の湖」。
しかし、ブルメイステル版「白鳥の湖」は、日本のバレエ団として初めて国内で公演され、なおかつ東京バレエ団でも初演なのだ。
「白鳥の湖」は、1895年の蘇演以降、多くの演出家によって様々な版が作られた。多くはプティパ=イワノフ版をもとに改訂を施したものだが、ストーリー、登場人物、曲順などは版によってはかなり異なっている。
白鳥たちの登場する第2幕は、現在、プティパ=イワノフ版が大きな影響力を持っており、イワノフの振付がほとんど原形のまま見られる版が多い。
以下が主なヴァージョンだ。
ゴールスキー版(1933年)
ニコライ・セルゲイエフ版(1934年)
メッセレル版(1937年)
バランシン版(1951年)
ブルメイステル版(1953年)
ヌレエフ版(1964年、1984年)
プティパ版(1952年)
グリゴローヴィチ版(1969年、2001年)
マッケンジー版(2000年)
マシュー・ボーンの「白鳥の湖」(1995年)
☆参考 マシュー・ボーンの「白鳥の湖」(1995年)については、以下で記しているので参照されたし。
http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03
☆ブルメイステル版「白鳥の湖」とは?
1953年、ウラジーミル・ブルメイステルによって振付・演出され、スタニスラフスキーおよびネミローヴィッチ=ダンチェンコ劇場で初演された。
プロローグ、エピローグによって話の流れもわかりやすく、他のヴァージョンに比べてドラマ性を重視して作られた版だ。オデットが 鳥に姿を変えられる序章場面と愛の力で人間に戻るという終結場面を導入したところが特徴的。
また、チャイコフスキーの書いた曲の校正を復活させ、削除や省略を廃して曲の順番を出来る限りオリジナルに戻し、物語をわかりやすくしており、音楽としても原典への回帰を意図している。
プティパ、イワノフ版の曲順とは異なっている。
第三幕の民族舞踊は、王族や貴族の食卓・娯楽・社交・祝賀などの場で演奏されるような単なるディヴェルティスマン(divertissement)ではなく、各国のキャラクター全員がロットバルトの手下という設定になっているのも特徴。
そのため、民族舞踊が物語の一部に組み入れられており、突然、宴が始まるということなく、自然なストーリー展開になっている。
一幕では未熟な王子が愛に目覚めて力強い男性に成長するというテーマもはっきり浮かび上がる表現方法を取っている。
2015年8月より斎藤友佳理芸術監督のもと、新しいスタートを切った東京バレエ団。
振付・演出を行なったウラジーミル・ブルメイステルの娘で、著作権保有者でもあるナタリヤ・ブルメイステルは、この東京バレエ団での公演の協力し、そのことを喜んでいるという。
ブルメイステルはチャイコフスキーの従兄の孫ということもあり、チャイコフスキーの音楽を心から愛していたという。
斎藤友佳理芸術監督の夫であるニコライ・フョードロフの父、ゲンナジー・フョードロフが、舞台美術家としてウラジーミル・ブルメイステルと共に美術家として働いていて、ブルメイステル版初演時の美術も手がけたのだ。
彼らは友人同士で、その次の世代にも引き継がれ、家族ぐるみのお付き合いが続いているという。
そんなご縁で、このブルメイステル版が実現できたのだ。
この公演に際し、1953年の初演の時に小姓役で出演し、ブルメイステルのもとでこの作品を踊っていたというアルカージー・ニコラエフの指導を仰いだということも大変意義深いことだ。
アルカージー・ニコラエフは、以下のように語っている。(以下、東京バレエ団サイトより引用)
「スペイン、ハンガリーなどの各国の踊りは、単なるディヴェルティスマンではなく、すべて悪魔ロットバルトとその手下たちが創り出す世界。彼らはジークフリート王子がオデットを裏切るように導けと、ロットバルトに命令されているのです。どうもその企てがうまくいかないということになると、オディール自身も呼んできて、ジークフリートを惑わす。彼はもうわけがわからなくなり、大事に持っていたオデットの羽根をオディールに手渡す。その瞬間、オデットを裏切ってしまったことが明らかになるのです。」
今、新生東京バレエ団に大変期待が集まっている。
関西では、一日だけの公演だ。関西では、残念ながら東京に比べ、バレエの公演が少ないが、この公演の主催は読売テレビと兵庫県立芸術文化センター だ。 関西に居ながらにして東京バレエ団の公演を鑑賞できるという稀有なチャンスである。
兵庫県立芸術文化センターは単なる会場貸しではなく、さまざまな芸術を発信すべく練りに練った公演を企画、制作しているという。
大阪交響楽団の演奏とダンサーの息がぴったり合っており、音響もよいホールだ。
オデット/オディール役の上野水香は、日本を代表するバレリーナで東京バレエ団プリンシパルだ。
清純なオデット(白鳥)と妖艶なオディール(黒鳥)を全く違う人が演じているような演じ分けが、ことのほかすばらしい。
また、肩の非常に柔らかい動きは、肩から羽が生えているようだ。白鳥になりきっていた。
見栄の切り方も微動だにせず、完璧だ。
軸足の美しさもさることながら、反対の足の角度の美しさはため息が出るほどだ。
日本のバレエはクオリティが高く、決してヨーロッパにひけは取らない。また、日本が自信を持って世界に誇れる総合芸術だ。
技術はもちろん、ビジュアルもこの二人なら、ヨーロッパの伝統あるバレエ先進国に勝るとも決して劣らない。
また、東京バレエ団のコール・ド・バレエ(corps de ballet 群舞)は、日本人の真面目さ、実直さ、正確さが特に秀でていた。
伝統を受け継ぎながらも果敢に挑戦する東京バレエ団にはもっと多く公演をしていただきたいと思うのは筆者だけではあるまい。
これをご縁にバレエ芸術のファンが一人でも増えることをと心から願う。
この公演のパンフレットには、ブルメイステル版や斎藤友佳理芸術監督の思いについて、大変詳しく書かれている。ブルメイステル版については、書かれた書籍もあまり多くないので、このパンフレットは、貴重な資料だ。
プリンシパルの上野水香には、終演後楽屋にお伺いし、インタビューをさせていただいた。
その模様は、後日、お知らせするので、楽しみにお待ちいただきたい。
■出演者
指揮 アントン・グリシャニン
演奏 大阪交響楽団
ソリスト 上野水香(オデット/オディール)
柄本 弾(ジークフリート王子)
出演 東京バレエ団 キャスト
音楽 P.I.チャイコフスキー
振付・演出 ウラジーミル・ブルメイステル
指揮 アントン・グリシャニン
演奏 大阪交響楽団
日 時 2016年2月17日(水) 開 演 19:00 (開 場 18:15)
会 場 芸術文化センター KOBELCO大ホール
料 金 S \13,000/A \11,000/B \9,000
C \7,000/D \5,000
■主催
読売テレビ
兵庫県
兵庫県立芸術文化センター
☆参考URL
☆東京バレエ団
http://www.thetokyoballet.com
☆兵庫県立芸術文化センター
http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/top.html
☆次回東京バレエ団公演予定
ラ・シルフィード 全2幕
公演日:2016年04月29日(金) 2:00PM
04月30日(土) 2:00PM 会場:東京文化会館
☆上野水香 オフィシャルサイト: Mizuka Ueno Official Site
☆上野水香公式ブログ
☆上野水香(オデット/オディール) 柄本 弾(ジークフリート王子)出演のコンサート+バレエ
2016年2月23日(火)
19:00開演(18:00開場)
フェスティバルホール
このヴァージョンは、ブルメイステル版ではない、旧ボリショイ劇場版で定評のあるゴールスキー版だ。
日を置かず、2つの版の「白鳥の湖」を同じバレエダンサーで楽しめる、またとない機会。
<指揮>井上道義
<共演>
青山季可&中家正博、下村由理恵&佐々木大、上野水香&柄本弾
<曲目>
チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32(オーケストラのみ)
チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」(オーケストラのみ)
チャイコフスキー/3大バレエ
「くるみ割り人形」より第14曲“金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ”【青山季可&中家正博】
「眠れる森の美女」より第28曲“グラン パ・ド・ドゥ”【下村由理恵&佐々木大】
「白鳥の湖」より“黒鳥のグラン パ・ド・ドゥ”【上野水香&柄本弾】
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「美育」のすすめ
サイト開設のきっかけ
弊社は社員研修サービスの会社です。
社員研修を行っていて、美術館にあまり行ったことがないという受講生の話をよく聞きます。
美術には商品開発のインスピレーションを生んだり、作家の仕事の仕方を学んだり、とビジネスに役立つヒントが多く潜んでいます。
しかし、美術館を自分の仕事に役立てている人は少ないのが、日本の現実です。
海外では、仕事に行き詰った時には、美術館に行ってリフレッシュするビジネスマンが多いのです。
また、芸術からパワーをもらうという人も多いのに、それを活用していないのはたいへんもったいないです。
これが、日本が国際競争力で負ける原因の一つではないかと思いました。
最初は、自分の受講生に美術館に行くことを勧めていました。ですが、課題として出すと美術館には行くのですが、どうも課題だから仕方がないといやいや行っていることに気づきました。
また、どこの美術館の何展を鑑賞したらよいかわからない、そこから何が得られるのかわからないという意見を多数聞きました。
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大変情けない気持ちでいっぱいでした。しかし、現実を見ないわけにはいきません。
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